おまえ達の年の頃、こんな物
食べた事無かったんだよ。。。

そう言ってふくぞくへ牛ジャーキーを渡す。
目はジャーキーに釘付け。何も聞いていない。

当たり前だ。

 ゆきの物。。。小さめの毛布とバスタオル一枚だけ。。。
それをチビ達へ使用している。
ゆき在りし日に洗ってしまったその毛布。
だが、ゆきの香りは残っていた。
新しいラッピングペーパーの様なゆきの匂い。

苦渋の選択だった。
それ等をこの仔達に使用するのは。

ゆきの香り存在は消えてしまった。
その他、まだゆきの物達は一切手付かずのまま。

ゆきより少し早く旅立った仔のママが
ご自身もその仔の物は一生洗わない、と。。。
あぁ、同じ思い。。。心が救われる気がした。

ゆき。。。ゆきお姉ちゃん。
知らぬ間に3頭のお姉ちゃんになっているゆき。

毎日、毎時間、毎分、毎秒
申し訳無い事をした、ごめんなさい。。。
と涙が溢れかかる。そしてそれを飲み込む。

涙を流すなんて贅沢だ、って思うからだよ、ゆき。

ふくちゃんの背中を摩る、ぞくのお腹マッサージをする。
えみの薄い皮膚を緩く乾布摩擦する。

ゆきへもこんな事したかな、してあげた事あったかな
って思い起こし乍ら。。。きっともっと撫でて欲しかったんだろう
って。。。

ゆき、ごめんね。。。

ふくちゃん、ゆき覚えてる?
おまえがこの中では一番長い間関わりが有ったんだよ。
ぞくは記憶ないかな?

暴れるえみを抱っこし、ゆきの小さな部屋の前に座る。
おまえのお姉ちゃんだよ、完璧でパーフェクトな仔
だったんだよ。
おまえにも何処かで少しはゆきとの繋がりが
有るのかな。。。
なんて泣き乍らえみに話し掛けてるよ。
涙が落ちそうになったけど零さなかった。

何時、思い切り泣けるのだろう?
恐らく一生それは無いかな、って思うんだよ、ゆき。。。

自己満足の涙は流せない。
それ位は我慢しなくちゃ、そうだよね、ゆき。。。
横になって眠る事もしない。。。せめて。
だからかな、この眩暈。

消えて無くなってしまいたい。