ゆきの夢を見る。

大昔から夢は現実と区別が難しい程
鮮明だった。
それでも飽くまで、夢。
鮮明過ぎるが、何処かしら辻褄の合わない部分も
否めない。
ゆきがお産をしたが、産まれた仔は
皆子猫さんだった等々。。。
これは夢だ、早く目を覚まそう、と
念じた事も数え切れない。
 
小学生の頃、夢が色付きかどうかと
友人が聞いて来た。
恐らくその時に初めて知ったのだろう、
夢は色が付いて居ない事もあるのだ、と。

現在生存する者が、誰かの夢の中で
亡くなった場合、その夢の主人公は
長生きする---等という御伽噺を信じ様とする。

怖くて仕方が無い。
日常のあらゆる柵、悩み、自分の間抜けさが
招いた詐欺事件諸々等
ゆきの生死に比べれば大した事は無い。
例え無一文になったとしても、住む所が
奪われたとしても
ゆきの生死を超える恐怖は無い。

ハッとし目覚める。
ゆきがモゾモゾして居る。
咳嗽は無い。静寂の中再びゆきの寝息が
聴こえる。

臨終を迎えるその刻、
どうすれば良いのだろう。
日増しに現実味が増して来る。
足音も無く忍び寄る黒い空気。

やはりイヌも数日前より喘鳴が増えるのか、
その際、ヒトの様にセミファーラー位を
取るべきか、完璧に咽頭が麻痺した場合
輸液をした方が良いのか、
往診を頼むべきか。。。
体重に合わせたモルヒネ投与は可能か。
セデーションの意味にて。。。否その前にアトロピン?
違うダメだ、ゆきはMR心肥大がある。
否、MRは禁忌ではなかった?
あらゆる考えが交錯し脳ミソは破裂しそうだ。

先の事を考えない様にしようと
頭では理解して居るが
心が勝手に暴走する。

ゆきが楽に過ごせる様。。。
苦しまない様何か出来る事は無いか。